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「桜華茶房」の創作戦国についてのログです。 BASARAの創作奥様もここに置いてあります。
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以前UPしていたものを再度UPしました。
多少、書き換えたところもあります‥。
創作松永久秀と奥様。
正妻の幻術に恐怖を感じたという久秀の話を書いてみました。
まぁ、普通読むとどう考えてもやましい部分があったから
驚いたようにしかみえませんけど‥(え)
たぶん、それとお化けとか
まだ信じている時代だったからっていうのもあるけど‥。
だけど、あえて解釈を違くしてみました。
これでも許されますか?(誰に聞いてる)
一葉というのが久秀の正室で、長慶の一人娘です。
(この設定はWikiの久秀さんの奥様について
書いてあるものから作っています)
ただし、この逸話が正室であったかどうかまでは
ちょっと分からなかったので
そこら辺はご愛嬌‥ということで(汗)
名前は創作。

――ある意味で、それは余興であり、暇つぶしだった

「お前は幻術を見せることができると聞いたが、本当か?」

酒の入った杯を傾けて、久秀が尋ねる。
正面に座っている果心居士が小さく笑う。

「興味がありますかな?」
「ないといえば嘘になる」

久秀は笑い返すと杯を置いた。

「俺は恐怖というものを感じたことがないのだ。
そこでだ。‥お前の幻術とやらでどんなものだか教えて欲しい」
「なんと‥」

居士は小さく驚愕したが、顔は楽しげだ。

「よろしい、やってみましょう。
ご期待に沿えるかは、分かりませんがね」

にこにこ笑いながら、居士は立ち上がると蝋燭の炎を吹き消した。
あたりが真っ暗な闇に変わる。

「静かな夜だな」

久秀が呟くと居士がギシッと音を立てて、庭先に出た。
すると何故か明るい月が次第に曇っていく。
そのうち、先ほどまで晴れていたはずの空から雨が降り出してきた。

「ほぉ‥」

静かな空間に久秀の感嘆が漏れる。
生温い風が部屋に入り込んできて、闇が深くなる。
久秀は闇になれない瞳を凝らし、ジッと庭のほうを見る。
白いものが目の端に揺れていた。
次第になれていく目に映るもの。
それはどうやら人のようだ。
細くて、白い肌。
その髪が風に揺れる。
ハッと久秀は目を見開き、立ち上がる。
心臓が、鼓動が‥突然早まる。
白い人は久秀のほうに静かに歩んでくる。
ゆっくりと、だが確実に。
そして、傍に来ると久秀の目の前に座った。
まさか‥と思いながらも、尋ねる。

「誰だ?」

何故か、声が僅かに掠れた。
相手の顔がゆっくりと上がり、その赤い瞳が久秀を映す。

「今宵は誰もお傍にいないのですね、久秀様。
ならば、私がご一緒しても、いいでしょうか?」

柔らかな、でも何処か悲しそうな声。
ガタンッと床机が倒れたのは久秀が無意識に後ずさったから。

「何故‥お前がここに‥」

言葉が続かない。
にこっと微笑まれ、一層身体が固まる。

「いては‥迷惑ですか?」

迷惑という問題じゃない。
久秀は叫びだしたいのを抑えて、困惑している自分に苦笑した。
たかだかこれくらいで‥と思う。
だが、‥確実に動揺している。
この世にいないはずの女が今、目の前に座っているからだ。
この状況に冷静に対処する術を失っていた。

「幸せそうで、何よりです‥」

赤い瞳は血のように紅い。
生気のない顔は死人のそれ。

「俺に、‥文句でも言いに来たのか?」

声が上手く出ない。
女が音もなく立ち上がって、久秀に近づく。

「文句なんて‥。貴方にお会いしたかっただけです」


あぁ、‥底冷えするくらい死とは恐ろしいものだな。


死に関して、それほど何も考えていなかった自分がまさかこれほどに‥。
久秀はその視線から逸らせなくなった。

「ずっと、ずっと‥お会いしたかった」

冷たい手が頬へ触れる。
氷のように冷たい。

「そうだな‥お前に殺されるのも、一興かもしれない」

こんな形の終焉もまた、運命なら。
女の唇が久秀のそれに重なる。
久秀はそのよく覚えている小さな身体を抱き寄せた。
途端、まるでガラスが砕け散るように女の姿が崩れる。
それはほんの一瞬の出来事。
目の前で起こった出来事に久秀は時を止めた。


心が大きく揺らいで、痛いほどに締め付けられる。


「如何でしたかな、久秀様」

そう声をかけられ久秀は瞳を動かし、ようやく開放された。
まだ心臓が大きく鳴り響いている。

「あまり、怖がられてはいませんでしたな。私も修行不足」

困ったように言う居士にギュッと拳を握る。

「いや、そうでもない」
「は?」
「俺は心底、恐怖というものを味わった」

まさか、目の前であんなことが起こるとは‥。

「お前はすぐれた術者だな」
「お褒めに預かり光栄です」
「今宵はどうやら余興が過ぎたようだ。疲れたよ」
「きっと、幻術のせいでしょう。ゆっくりお休みください」
「そうさせてもらおう」

久秀はお辞儀をして、去っていく居士を見つめ、ふっと顔を上げた。
外は何事もなかったように月が出ている。

「先ほどのは、夢‥か」

いや、幻術か‥。
そう思い、縁側を見ると何かが光っている。
拾い上げて、息を呑む。
月に紅く輝くガラスの破片。

「今宵はお前をこの手で壊したという、
つらい夢を見ることになりそうだよ」

久秀は小さく呟いて、その破片を握る。

「一葉‥」

その名の姫は、六年も前に亡くなっている。

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